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別れ

「あーめんどくせぇ」

「煙草を吸いながら貴方は言った。
 薄暗い部屋、毛布に包まって二人。
 でも貴方が吐き出す言葉は、
 まるで二人を引き裂くような言葉。」

「もういいんじゃねぇの?
 疑似恋愛なんてウンザリだって
 言ってたじゃねーの。
 いい加減辞めようぜ、こういうの」

「こういうのって、お前が始めたんじゃないか。
 どっちだよ、
 好きだの、愛してるだの言っていたのは。
 それが今では、
 もう冷め切った夫婦そのまま。」

「お前、自覚あるんじゃねーの?
 愛されてない自覚とか、俺の気持ちとかさ。」

「自覚は…ある。
 解ってるけど、離れられない。
 そういう関係だって、
 あったっていいじゃないか。」

「もういーよ。
 愛なんてなかった。」

「もう言うな。
 何も言うな。
 お前の言葉なんて聴きたくない。
 そう思っていたら、
 突き刺すような一言が返ってきた。」

「じゃ、別れよっか、俺ら。」

「もう、いいや。
 いいよ。
 そう答えると、
 彼は面倒くさそうに煙草の煙を吐いた。」

「そんじゃ、俺、帰るわ。
 別に、嫌いになったとかじゃねぇから。
 ただ、面倒になっただけだよ」

「それだけ言って煙草をクシャと潰した。
 わたしだって面倒だよ、畜生。」

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